宍道湖まで足を延ばしてみる。 湖岸を訪れると、足もとはびっしりとシジミの貝殻で埋まっていた。 人と貝の歴史は長い。 美しい貝殻を眺めながら、奥出雲の旅で得た人と自然、 そしてそこで生まれてきた物語を考えていた。 人の歴史など、もしかするとすぐに土に帰ってしまうものかもしれない。 ところが物語として語り継ぐことによって、 それはかけがえのないものになっていく。 忘れかけていた物語の意味、そんなものを漠然と考えながら、 間もなくこの旅が終わろうとしていることに寂しさを感じていた。