春風を切って

岬に近い最後の集落は、春の陽気で満たされていた。
ただ風が少々強いが、そんな贅沢は言うまい。
ひなびた倉庫を抜けると、目の前には日本海が広がり、
足もとから続く岩の向こうに、小さな祠が祀られていた。
そんな光景に、カメラを向けようとしたちょうどそのとき、
一艘の漁船が春風を切りながら、海上を駆け抜けて行った。
次第に遠ざかる軽やかなエンジン音が、この日差しになんとも心地いい。

 
写真一覧へ
前の写真へ 次の写真へ
Photo&Essay:Shuji Enmando